セロー250でユーラシア大陸横断 56

9月23日

熊に襲われることもなく無事に朝を迎えました。とても冷え込んでよく眠れず寝たり起きたり。ヨーロッパで冬になるので物価の安いトルコでいい寝袋を買うことを検討しています。

今朝は湖面が凪いでいて巨大な水鏡に。重なった山脈が逆さに移り込むと模様のようで情報量の多い絶景です。散歩してみると昨日超えるのを断念した川を見つけました。ゆっくり支度をして12時に出発。暑いのにカッパを着こんで針の林をやり過ごし、崖を越えて湖畔を一周。

サマルカンドに行く道に合流してしばらく走るとドゥシャンベで昨日別れたばかりの沖野さんと再会。しばらく道端でお話しして再びそれぞれの旅へ。

今日も谷合を走る道でとても楽しいのですが、ワハーンから同じような道が続くので写真を撮ろうという気になかなかなれません。セブンレイクと呼ばれる7つの湖をめざしているのですが、街で遅めの昼食を取ると15時30分で残りが舗装路60kmにダートが30kmとかなりピンチ。

先を急ぎつつ買い出し。タジクはドゥシャンベ以外でお酒を見かけず困っていたのですが、今日は商店でビールやウォッカはある?と聞くと人目を気にした後に店主のおっさんが裏手に消え、ニヤニヤと悪い笑顔で帰ってきました。手に持った黒い袋の中からビールをちらりと見せてニヤニヤと会計してくれます。宗教的に堂々と売るのはよろしくないのでしょうか。僕もビールを受け取りニヤニヤしながら店をあとにしました。

ウズベクへの道をそれ、ミリタリーチェックを越えてしばらくは綺麗な舗装路。中国との友好のあるエリアらしく国旗の書かれた看板をよく見かけました。そのうち道が荒れたダートに。狭い集落をたびたび超えて、川沿いの入り組んだ面白いダートを抜けていきます。時間もないし日も山に沈んでいたのでgoproにすべてを任せ走るのみ。

1つ目の湖の美しさに目を奪われますが寝る場所がなく、3つ目あたりでやっと広い河原に乗り付け設営。やっとカメラを取り出しました。明日はじっくりと写真を撮りながら進みたいです。

夕食にペペロンチーノを作ると事件発生。2回くらいしか作ったことがなく、久しぶりなせいで唐辛子の分量を間違えたのか炒めていると気化した唐辛子成分が目に直撃。目が焼け付くように痛み、まぶたを開くことが出来ません。目薬を差すとさらに鋭い痛みが走り、水をつけてもダメ。どんどん痛みは増していくのに目が開けられず恐ろしくなります。

激痛の中なんとか冷静になり、調理した手にも唐辛子の成分がついていたことに気が付きます。シャンプーで手を洗ってタオルでぬぐい、トイレットペーパーに水を含ませまず目の周りを拭きました。そしてもう1枚濡らして目にあてると数分後になんとか目を開けられるようになりました。ほんとうによかった。

目をつぶっていてもテント内ならどこに何があるのか分かって処置できたので、長い野宿生活でちょっとは経験が効くこともあるのだなと感心です。滅多に役立つことはありませんが。とても懲りたのでこれからは野外で唐辛子料理は封印しようと思います。

寒さを覚悟していた夜はとても涼しくて、お酒もないのについついぼんやり風にあたって過ごしました。

9月24日

朝から目の前の水面で魚が跳ねていてわくわくと釣り竿を用意しました。湖は遠浅になっていて河原からは魚のいる場所までルアーが届かないので半ズボンになり、冷たい水の中を進んで竿を振ります。日が出てくるまでは足の感覚がないほどでした。

湖底が深くなる縁に数百匹以上の稚魚がうようよしているものの、成魚の姿は見当たらずアタリもありません。悔しいですが綺麗な水に浸かり谷底から山を見上げながら竿を振るのはとてもいいものです。

何度となくルアーを投じていると稚魚の一匹が運悪くツアーに引っかかり、ついに海外ツーリング1匹目の釣果。ルアーより小さい魚なのでただただ申し訳なく嬉しさは皆無でした。小さくてもいいからぐぐっという手ごたえに出会いたいものです。

今日国境を超える予定だったので早起きしたのですが、時間を忘れ熱中してしまい撤収すると11時過ぎに。とりあえず一番奥の7つ目の湖を目指します。

崖に挟まれた地形を利用して建てられた集落が現れました。石や木で出来た建物に、川と湖を使って生活している人々の暮らしが素敵でバイクを停めて写真を撮らせてもらいます。民族衣装をきたおじいさんに声をかけられ家でお茶をごちそうになりました。家には水道ガスどころか調理場もなく、お茶も他の建物から運ばれてきます。泊っていけといってくれましたが、今日も野宿したくなっていたのでお断りして先へ。

かなりがれた崖が続くので緊張していたのか、リアブレーキを引きづっていたようで写真のために止まろうとすると熱ダレでブレーキが利かず焦りました。

6つ目は山と山の間隔がかなり開いていて展望のある湖です。その奥7つ目に至る道はさらに細くなり、かなりの急坂を超えると草地の広場の奥に透き通った湖と特徴的な山が。

道はさらに続いていますがあまりに細すぎてUターンも難しく、奥からロバを引いた人がやってきたのでこれ以上進むのはやめにします。14時くらいでしたがテントを設営。

いい場所なのですが地元の人が子供を連れて車を洗いにきたり乗り合いタクシーで乗り付けてきたツーリストが騒いだり、おまけに15歳くらいの子供が食事中にテントに現れ泥だらけの手でバイクにべたべた触ったうえ煙草をねだってきたりと散々です。

どいつもこいつも広いのにわざわざテントの真横にやってくるので日本のキャンプ場を思い出してしまいます。タバコをねだる子供はあまりにもしつこく食事の邪魔されるのが我慢ならないので追い払いました。

すっと波が引いたように全員が居なくなって人心地つきます。静かになると改めていい場所で、何も考えずに景色を眺めていられました。明日から向かうウズベキスタンにはこういう景色はないだろうし、中央アジアらしい荒涼とした自然の景色はここで終わりかと思われます。きっともう来ることはないしよしんばこれてもバイクで、ましてやこのセローで来れることはないと思うので最後の日を存分に味わいました。

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