セロー250でユーラシア大陸横断 71

10月27日

朝一こんな景色が目に入ると自分がまだ夢の中にような気がします。ウシュグリ村の朝。秋口にやってきたのが良かったのかこの地形にしては素晴らしい天気で、それも自分のバイクで来る貴重な機会なわけですから降ってわいた幸運に浮かれました。

宿の朝食は食べきれないほどの量が出てきたのでビニールに入れてもらって、今日のお弁当にします。朝食の席で昨日お話しした日本人の方に近くのトレッキングスポットに2ケツで運んでもらえないですか、とのお誘いが。ちょうど向かってみる方向だったのでOKして出発。

最初の写真に写ってる山に向かって村から真っ直ぐ走ってきました。路面は可もなく不可もなくという感じですがやはり人を乗せて走るダートは普段より手足に力が入って疲れが。とはいえ迫ってくるこの絶景に細かいことはどうでもよくなってきます。

それに村から1匹の犬がずっとバイクに並走してついてきたんですよ。犬の考えなんて分からないですけどなんだか嬉しそうで僕たちも終始ニコニコ。この空間も相まって物語チックな体験でした。

バイクで行けるところまで進んで同行者の方とお別れ。この先にある氷河までトレッキングコースがあるそうです。犬は僕と女性の方を何度か見た後、僕のことをペロリと一舐めして女性と一緒に氷河の方へ歩いていきました。

景色の良いところでは1人で好き勝手回りたいという悪癖で1人と一匹にお別れしたのですが、やっぱり歩かないのが勿体なくなって氷河の近くまで1時間くらい歩いてみました。時々小川を渡河しながら林をくぐりガれた岩場を越えていく道。勾配は少ないけど歩きごたえがあってお手軽トレッキングにはよいところです。人の気配もまるでなくてどこでも座って景色を楽しめます。

日がてっぺんに上ったあたりでバイクに帰ってきました。トレッキングあとのバイクはたまらないねえと軽快に走り出した30秒後くらいになんだか激烈に嫌な予感が。うまく説明できないのですがなにかマズイ!と感じてブレーキをかけた瞬間ブチっという音が。

こわごわバイクを降りてみると荷物締めベルトがチェーン部分に絡まり、結合部のプラが吹き飛んでいました。ロシアからこれまで砂漠やら草原、たくさんの悪路を文字通り支えてくれていた大事な道具です。そういう感傷と現実的に今から移動できないどうしようっていう思いで頭が真っ白になり、絶句。

無理やり笑ってみたのですが悲しみの方はともかく焦りの方が収まりません。そもそも原因はなんだろうと考えたり朝の写真を見返して判明したのですが、同行者の方が荷台にトレッキングポールをくくりつけるのにベルトを使って結んでなかったようです。

使うなら確認してー!とか使ったら戻して!とか怒りポイントはあるんですが、これ結局自分が確認してから走れば起きなかったことです。荷台にポールついてる写真撮ってるわけですし。気づけと。人も責めれないけど自分が原因とは言い切れず、行き場のない感情でしばらく悶絶しました。景色に浮かれてたんですね…。

さすがにシュンとして宿に帰ってきました。でもいつまでも凹んでいられないので宿のおじいちゃんおばあちゃんを捕まえ、付け焼刃のロシア語と身振りで紐切れた!ひも欲しい!とお願い。農作業で使ってたビニールひもをいくつか切り出してもらってきました。

防犯のタイヤロックなども無理やり挟んで、なんとか応急処置完了。見た目は最悪、走れば荷物はじわじわ横に動く有様ですがずっと手で持って走るより現実的な落としどころです。後ろにだけは落とさないように色々工夫しました。1時間くらい宿でドタバタして体力も貴重な時間も消費。とはいえこれで先に進めます!

気を取り直してウシュグリを後にします。村の出口周辺にも素敵すぎる沢向かいの集落があってなかなか動けませんでした。これから進む先はメスティアというトレッキングの拠点になる町へ続いているそうです。

このメスティアという街からウシュグリまで歩きながら道中いくつかあるトレイルを歩くのが流行っているようです。宿でお会いした方もそうですし、実際大きなザックを担いで歩く人たちも何人か見かけました。途中宿のある小さな集落が点在しているので空荷で歩くのもいいですね。メスティア~ウシュグリ間はバスがたくさん運航してるので歩くのは片道でもOK。

車道もずっと展望のよい道ですが、歩きでしかいけない稜線越えのルートもいくつか取れるので機会があるなら歩いてみたい場所です。以前sim購入に立ち寄ったクタイシからメスティアまでバスが出ているので務めてる人でも長期休暇で十分狙えそうな行程です。

ダートと舗装路が入れ替わり続く道を抜け、いくつかの集落で道をそれて丘の上に登ったりしながらゆっくり西へ。1つバイクでも簡単に行けるトレイルがあるというので向かってみました。朝見たような氷河に向けて進んでいく期待値の高い景色ですが、思わず真顔になってしまう荒れ果てた道のりです。

凹型に高く岩が積まれた沢越えや20Mくらい一面泥で埋まる場所など、写真にとる余裕もないエンデューロ体験をして意外と丈夫な積載と、火事場の馬鹿力か自分の技量を越えた運転に驚きつつ山の入り口に到着。

数人すれ違った人たちにドン引きされたり激しく褒められたりしながらバイクを止め、枯れ草に包まれた山を登っていきます。入り口はトラバースって概念が存在しないほど急斜面で立っていられません。

峠越えに使うルートの一部でこちらからアクセスすると道から見えない絶景の山域があるそうなんですが、酷道を荷物満載のバイク押し歩いた疲れが馬鹿にならず時間も16時と押し始めたのでほどほどでUターン下山しました。今日の運動量はなかなかのものです。

あまりの疲労に登山口のはずれで野宿することも考えましたが、今日の勢いで戻らないとバイクを落としてしまいそうな危うい道だったので頑張ってメスティアへ。

とはいえ道中もカーブを曲がるたび、峠を越えるたびに現れる絶景の数々で全く距離を稼げず薄暗い中なんとか宿を見つけて宿泊。観光の拠点だけあって流行りのスキー場周辺くらいには栄えてます。素泊まり1泊15リラとなかなか高額のドミに身を沈めて今日は終了。

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