セロー250でユーラシア大陸横断 42

8月19日

案の定朝からひどい雨です。風も強く砂浜なのでペグが抜けてテントもガタガタ。あまり寝れず早く目が覚めてしまい、このままここに閉じ込められるのが嫌でずぶ濡れのテントをカバンに押し込み無理やり出発。

西に進むにつれて晴れてきて、路面も乾いてきたのですが昨日もう1つこのあたり野宿地にしようかなと考えていた辺りまで来ると真っ黒な空に強い風が吹いていて妙に安心しました。どのみち外れです。

ビシュケクで別れた沖野さんとメッセージのやりとりをした際に天気を聞いてみると、1度雨に降られただけでオシ(タジキスタン国境方面の大きな街)までたどり着けたとのことで、よほど運が悪かったことが判明してしまいました。

コチコルに到着。小さいのにごみごみしていて苦手な街です。バーガーキングの看板があって半笑いで入店してみると、やはり全く関係ない普通の食堂でもちろんハンバーガーはメニューになく、それどころかメニューのほとんどが今作れないと言われてプロフしか選択肢がありませんでした。

さくらゲストハウスのオーナーに教わったコルコックという湖を目指します。周りが山に囲まれ全く観光地化されておらず、湖にはマスがいて釣りが楽しめるそうです。

地図を見ても衛星写真を見ても道がなく、地形図を見てなんとかたどり着こうと湖の南から攻めてみました。道中は切り立った山に囲まれた谷合を走るとても楽しい道のり。舗装路もダートも軽快に走れます。川も美しく山もまるで北海道の岬のように薄く色素の抜けた茶色い草に覆われています。

斜めに斜度がきつく細い道をなんとか登り切ると草原の丘に出てモンゴルを思い出す景色。そのまま山に登っていくと、かなりの高地で山に抱かれるような広い台地に出ました。しかしどこもユルタで道が終わっていて、勘で斜度の緩い山を登っていきます。地図によれば山を4つは越えたなくては湖にたどり着けません。

かなり無茶をしてこれ以上いけない、というところまで登ったところでみぞれが降り始め湖は断念。ほんとうに幻の湖になってしまいました。

湖が無かったので川で釣り。今回もぼうず。

途中ご飯を食べてソンクル湖へ。標高3000mにある山に囲まれた山上湖で有名な観光地。しかしイシククル湖より落ち着いていて景色がよいとのこと。こちらも楽しみにしていました。

こちらも行くまでの道が長いダートでとても美しい道。谷や崖を走り抜け近づいては過ぎていく山の景色が豊かです。

湖まで登る道に入ると草に覆われた巨大な渓谷を見下ろしながら高度を上げていきます。
振り返ると渓谷から向かいの山までずっと緑が続いていてなんともいえない景色の広がりを感じられます。

峠を越えるといよいよ西日に光る湖が見えてきました。いざ近寄ってみると周辺の道はドロドロで、しかも土質が悪くひどく滑ります。1度50kmほどで走っているとき不意な段差でフロントをとられまともに転倒してしまいました。こんなまともに転んだのは久しぶりです。体もバイクも滑っていったので痛みも故障もありませんでしたが服は泥だらけ。

湖の入り口はユルタのあるキャンプ場になっていて人が多いので奥へ。

一周何キロか分かりませんが相当広いのですぐに一人になれる場所を見つけられました。テントを張りますが風が強く、服をすべて着込んでも寒くて外にいられません。せっかく綺麗な水も波がたち、湖全体がどんより曇っていて展望もないのでビールを飲みすぐにテントに入りました。

夜になり波の音が穏やかなので外に出るとひんやりした空気に満天の星。天の川が湖面に反射して輝いていました。写真を撮ってウイスキーのお湯割りを飲み、たばこを吸いながら椅子に座っていると流れ星も。そのうち月が出てきて星は消えてしまいましたが波の音と空気が心地よく、しばらくぼんやり空を見て過ごしました。

8月20日

寒さと地面の凹凸でうまく寝られず疲労困憊の朝。天気はやっと晴れて期待どおりの景色。動く気になれず寝たままでいると馬に乗った遊牧民の男2人が訪ねてきました。

ノラとジョニーというおじさんたち。遊牧民らしく遠慮なく無邪気にたばこをねだってきます。疲れているので適当にやり過ごそうとしているとテントから引っ張り出され馬に乗せられました。

ジョニーが手綱を引いて全力疾走。駆け足程度しか経験がなかったので必死にしがみつきます。慣れてくると早くかけている時の方が揺れが少ないことに気が付きました。景色が流れて行って馬の脚が地面を蹴る力強さが伝わってきます。浮遊感があって飛んでるみたいです。思わず疲れも吹っ飛ぶ体験でした。

終わったあとにお金とたばこをねだられましたが、ノラのほうがたしなめてくれてたばこをもう2本出してお別れ。ノラのほうはなんとなく亡くなったおじいちゃんに顔立ちが似ててちょっと嬉しくもしんみりします。

その後は晴れたり曇ったり雹が降ったりと忙しい天気。一度は興奮で忘れた疲れもぶり返してきて、お昼にトマトパスタを作ったあとで片付けるのがめんどうになりそのままもう1泊することにしました。

ここしばらく停滞して雨にやられるパターンだったので早く出たい気持ちがありますが、どうせ天気はコントロールが利かないものですし、悪いなら悪いであんまり落ち込んでも仕方ないという気になってきました。

本読んで三食作って食べて散歩して何もせずぼんやり。人と話すのがめんどうで、楽しみにしていたソンコル湖もきれいだけど心動かずなんだかなぁといった感じだったのですが、そんなぼんやり生活でなにかが回復したようで昨日と同じどんより荒れた湖を見ても北海道の屈斜路湖で野宿したことを思い出し、連鎖的に過去の旅の記憶がよみがえってきて無性に楽しい気持ちになってきました。

たまになんで旅をしているんだろうなとありがちなことを考えてしまうのですが、昔の旅のことを思い返すと楽しかったり幸せな気持ちになるのできっと意味があるのでしょうね。いま久しぶりに明日が楽しみになっていて、それがとても嬉しいです。

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